今昔庵日記

某大学で臨床研究推進支援業務に従事しています。普段の業務に関連することを書き溜めていきます。

サプリメントの臨床研究

厚生労働省のホームページにある「臨床研究法について」のページで、「1-1.臨床研究法(平成29年法律第16号)」の「参考資料:臨床研究法の範囲について」が、人知れず(知らなかったのは私だけかもしれませんが)更新されていました。

新たに制定された臨床研究法が及ぶ範囲、つまりどこまでが法の適用を受け、どこからが対象外なのかという境界線の解釈について、法の施行前から、2018年4月の施行後、現在に至るまで議論が続いています。それほどわかりにくい法律だということですし、後から法律違反だと言われないために臨床研究に携わる我々は学会やセミナーなどに参加したり、厚生労働省の医政局研究開発振興課に直接問い合わせたりして情報を求めています。

そんな中、7月30日にQ&A(その4)が追加掲載されたこともあり、ますます解釈論が活発しているところでの「臨床研究法の対象範囲について」の更新です。全部で6ページあり、初めの2ページはこれまでと同様の図が掲載され、また臨床研究法における臨床研究の定義が示されていました。

3ページ目以降が新しい内容でした。「いわゆる「サプリメント」等の臨床研究について」とのタイトルで、食品として販売されている物やその成分が患者に対して病気などの治療に効果があるとうたうことを目的とした研究が、臨床研究法が規定している臨床研究に該当するのか、という課題です。これはQ&A(その4)の問60として掲載されています。この問いに対する回答では、病気の治療に対する有効性(効き目)、安全性(有害事象)を評価することを目的として研究する場合は、その物を単なる食品ではなく、厚生労働省が承認していない医薬品を使った臨床研究として、法に規定する臨床研究に該当する可能性があるとしています。法に規定された臨床研究に該当する、とは、サプリメントや食品として販売されている物であっても「病気の治療に対して効き目があるとか安全だと言うためには、科学的・倫理的に検討した実施計画を組み立て、信頼性のあるデータを出してから主張してください」ということです。

健康食品やサプリメントなどで過剰な表現をしてあたかも病気を治す効能を持っているかのような宣伝をしているものがありますが、いずれも科学的な根拠が示されない限り、してはいけない宣伝であり、その効能はないと考えるべきです。いわゆるプラセボ効果によって、飲んだ人の一部には効果を実感した人もいるかもしれません。しかし、科学的なデータとは、プラセボ効果など正当な評価をするうえで妨げとなる偏りをできるだけ排除して計画された試験計画に則って実施されるため(それでも偏りを完全に排除することはとても難しい)、真に効果があるのならプラセボ効果を上回る効果を示すことが期待されます。

しっかりとした根拠データも持たない健康食品やサプリメントが世にはびこることの無いよう、科学的な臨床研究に基づいて健康的な社会の実現に貢献していきたいと思います。また、いかがわしい物を見極める目も、養っていきたいと思います。

 

より良い医療を届けるために、頑張ります。

2018年8月27日