今昔庵日記

某大学で臨床研究推進支援業務に従事しています。普段の業務に関連することを書き溜めていきます。

特定臨床研究の該当性

2018年9月7日(金)8日(土)の2日間、一橋大学一橋講堂(東京都千代田区)で「第8回レギュラトリーサイエンス学会学術大会」が開催されました。臨床研究の計画、実施にあたって課題はたくさんありますが、最近のトピックはやはり臨床研究法(以下、「法」と書きます)の対応かと思います。この学会でも大会長特別企画シンポジウムが組まれ、施行されて半年たった現時点での臨床研究による影響や課題が共有されました。

臨床研究を実施するアカデミアの立場として最も大きな問題は、計画している、又は実際に実施している最中の臨床研究が、法の定める「特定臨床研究に該当するのか」の判断が非常に難しいことです。法は一義的に該当性が判断できるような基準を示しておらず、実施者側としては施行規則やQ&Aも照らし合わせながら該当性を考えています。しかし、やはりグレーな判断とせざるを得ないものが多いのです。従前は厚生労働省からは「該当性に迷ったら医政局研究開発振興課に問い合わせてほしい」と言っていたのですが、問い合わせが殺到したからなのか、個別の判断は厚労省であっても難しいと感じたのかは不明ですが、最も新しいQ&A(その4)で「認定(臨床研究審査)委員会において判断することが適当」(問58)、「認定委員会の意見を聴くことが望ましい」(問59)などと、相談窓口としての役目を放棄したかのようなことになっています。

また、私も職務上、研究者の先生方から特定臨床研究の該当性に関して相談を受けます。その際、「該当性を判断してください」という相談が多いのですが、私は認定委員会の委員ではなく、AROの立場で先生方の臨床研究の実施を支援している立場です。助言まではできるのですが判断することはできません。

実際、学会でも「最初の頃は答えてくれていたが、最近はたらいまわしに遭い明確な回答はもらえなくなってきた」といった意見がありました。フロアから「研発課が答えないのなら、だれが判断するのでしょうか?」と質問があがりました。認定委員会では荷が重いと感じますし、認定委員会にそのような判断を任せるようなコスト(審査料など)は支払われていないと思います。

特定臨床研究に該当するにもかかわらずその対応を怠った場合、法律違反として反則金が課せられるほか、公的研究費が一定期間得られなくなるなど、様々なペナルティが課されます。したがって、該当性判断は非常に重要なのですが、だれが該当性を判断するのか、その判断は妥当なのか、今は誰も責任が取れない状況なのです。

走りながら考え、経験を積んでいくしかないのですが、問題が起こった時の影響が大きいのが怖いところです。

医師主導治験の実施能力が備わっているような例えば臨床研究中核病院のような施設であれば、あやふやな法に惑わされるくらいなら医師主導治験として実施していきましょう、という決断も可能です。実際、そのような呼びかけをしている施設がありました。どこかで割り切ることも必要かもしれません。

 

2018年9月10日