今昔庵日記

某大学で臨床研究推進支援業務に従事しています。普段の業務に関連することを書き溜めていきます。

男の下着:ブリーフかトランクスか

米国Bostonの研究者らが、男性が履いているパンツの種類と精子の生産能力(精巣の機能)の関係を調べた論文が出ていました。

Type of underwear worn and markers of testicular function among men attending a fertility center, Human Reproduction, Volume 33, Issue 9, 1 September 2018, Pages 1749–1756, https://doi.org/10.1093/humrep/dey259

 

これまで、睾丸の温度が上がると精巣機能が低下し、精子の生産量が下がることは知られていました。しかし、睾丸の温度と関係しそうな下着の種類と、精巣の機能との関係は調べられていませんでした。

そこで、米国BostonのMassachusetts General Hospital(MGH)という病院に不妊治療のために訪れた男性を対象として、過去3カ月の間で最もよく履いているパンツの種類を自己申告してもらい、その男性の精液を採取して分析しました。2000年から2017年まで調査が行われ、対象者は656名の男性で、年齢は18歳から56歳でした。

調査の結果、過去3カ月の間にぴったりフィットしたパンツを履いていたのが311名、ダボっとした緩めのパンツを履いていたのが345名でした。論文では、緩めのパンツをボクサー型(boxers)、ぴったりパンツを非ボクサー型と呼んでいますが、日本語的に言えばトランクスかそうでない方(ブリーフやビキニ型など)か、といったところかと思います。

パンツのタイプと精巣の機能との関係では、緩めのパンツのグループはぴったりパンツのグループと比較して、精子の濃度が高く、総数も多いことがわかりました。また緩めグループでは卵胞刺激ホルモン(Follicle Stimulating Hormone、FSHと呼称)がぴったりグループより少ないこともわかりました。

緩めのパンツを主に履く方が、ぴったりフィットするパンツを履くよりも、精子を多く生産し濃度も濃いものになるようです。

FSHは精子形成に重要とされているホルモンですが、緩めグループで少なくぴったりグループの方が高かったということは、ぴったりグループでは精子の生産が落ちたために、たくさんのFSHが体内で生産され、精子の生産量を上げようとしたようです。それでも緩めグループに量と濃さでは敵わなかった、ということになります。

 

ただし、この研究では最初に述べているように、不妊治療のために病院を訪れているカップルのうちの男性を対象にして調査された結果です。その不妊治療が男性、女性のどちらに原因のあるものかはわかりませんが、世間一般の男性を対象とした場合には、結果が異なる可能性もあります。

そのため、すぐに履くパンツを変えようとは思う必要はないと思います。将来、一般的な男性を対象とした調査結果が出た時、世界のパンツ市場の勢力図は大きく変動するかもしれません・・・。

 

より良い医療を届けるために、頑張ります。

2018年8月30日