今昔庵日記

某大学で臨床研究推進支援業務に従事しています。普段の業務に関連することを書き溜めていきます。

PMDA レギュラトリーサイエンスセンター 開設記念シンポジウム

2018年8月1日(水)に、日本消防会館内のニッショーホールにて、標題のシンポジウムが開催されたので参加してきました。

開催案内ポスターはこちら、リンク切れ御免。

 

PMDA理事長の近藤氏から開会の挨拶があった後、第一部として科学委員会の第三期(2015~17年度)の活動報告がありました。

レギュラトリーサイエンスセンター(以下、RSセンター)と何の関係があるのだろう、と思いながら聞いていたのであまり入ってこなかったのですが、第二部でRSセンターの概要や取り組みが説明されると、科学委員会の位置づけもわかりました。

シンポジウムの冒頭できちんとRSセンターと科学委員会の関係性を紹介しておいてもらわないと、重要なところを聞き逃しかねません。

「その辺はわかっているはずなので端折りまして」では困ります。

 

そして科学委員会の活動報告。

(1)希少がんの臨床開発の促進は、対象ががんであり、しかも患者さんがほとんどいない希少なものであることで、実行可能性と科学性のバランスをどうとるか、検討された結果が説明されました。

(2)アカデミアと企業の連携による創薬の促進。昨日のシンポジウムで話された演題で最もイライラしました。アカデミアで発見した創薬シーズを企業に紹介してもあまり良い手ごたえが得られないことが多く、その理由はヒトで本当に効果が得られるのかの裏付けとなるデータの不足や知的財産の未充足によることが多い、という解説でした。そんな話はだいぶ前から分かり切っていて、今頃になって偉い先生方が集まって提言を出すようなトピックではないと思います。アカデミアでは、細胞に振りかけて何か反応があったらすぐ「これは薬になる」といって企業に売り込みに来ますが、アカデミアの先生たちには、ADME(吸収・分布・代謝・排泄)という重要な観点が欠けています。動物がその物質を口から接種したり、注射などで直接血流中に投与した後、ADMEの影響を受けるので、効果を発揮したい臓器・組織に薬剤が到達するのか、十分な量が到達するのか、効果を発揮するのに十分な時間だけとどまっているのか、という情報が必要です。効果があっただけでなく、その濃度を体内で維持するためにはどれくらいの量を投与しなくてはならないのか、なども含めて調べて初めて、お薬になるかどうかが検討されることに早く気づいて、アカデミア初の創薬シーズについてADMEを検討する国立機関(アカデミアが容易に利用できるような薬物動態調査組織)を共通で利用して、企業に提案する前にある程度仕上げてほしい、というような提言がまとまると良いなぁ、と感じました。

(3)AIを活用、とタイトルを見ただけで「猫も杓子もAI」と思ってしまい、あまり真剣に聞きませんでした。

 

第二部はRSセンターを校正する三つの部の代表がそれぞれの活動内容を説明しました。

承認審査時にPMDAに提出するデータをどのように活用するのか、などが紹介され、大学で医師主導治験・臨床研究の推進支援をする身としては、それほど刺さる内容ではありませんでした。

 

よりよい医療を届けるために、頑張ります。

 

2018年8月2日

臨床研究法 Q&Aその4が出ました

2018年4月1日に施行された臨床研究法の施行に関して、Q&Aその4が発出されました。

いったいいつまで出続けるんだろう、という不安もありますが、そもそも完成度が低い(と思う)臨床研究法なので、こうやってガイダンスを出してもらい、できるだけ運用を円滑に行うことができるようにするのは、重要なことです。

今回、問54から問67まで14件が追加されました。

つらつらと読み進めていくと、問59で引っかかりました。

問59 診療の一環として医薬品等を使用された患者に対して、当該医薬品等の有効性又は安全性を明らかにする目的で採血等の追加の検査を行う研究は、観察研究に該当するか。

 

(答) 当該追加の検査が、患者の身体及び精神に生じる傷害及び負担が小さいもの(軽微な侵襲)である場合には、患者を前向きに組み入れる場合を含め、「研究の目的で検査、投薬その他の診断又は治療のための医療行為の有無及び程度を制御すること」に該当せず、観察研究に該当すると考えられる。

 なお、患者に対し、追加の来院を求める場合など、研究の目的で患者の行動を制御する場合(来院頻度・回数が事前に予定されている場合であっても、診療の一環としての来院の程度と同程度である場合を除く。)は、観察研究に該当しないことに留意すること。

 軽微な侵襲に該当するかどうかや、患者の行動が制御されているかどうかが不明確である場合は、認定委員会の意見を聴くことが望ましい。

ここでは、有効性又は安全性を明らかにする目的で、追加の来院を求めるなどして患者に対して研究目的の検査を追加するような場合には観察研究ではなく、特定臨床研究に該当すると考えた方が良い、という解釈かと思います。

これは、臨床研究法の解釈として元々あった考え方なので、良いと思います。

引っかかった理由は、5月17日に発出されたQ&Aその3に含まれていた問51です。

問51 以下の①から⑤までの要件の全てを満たす研究は、いわゆる「観察研究」に該当するか。

(事例)①診療を担当する医師の判断に基づき、患者への最も適切な医療として、医薬品Aを当該患者に投与する。②患者の割付けや他の治療方法の選択を制約する行為などは行わない。③ある条件に合致した患者数の目標を事前に設定する。④その患者の投与後の転帰や予後などを確認するために、診療の一環として、事前に予定した診察、検査等を実施する(標準的な診療と比べて、診察、検査等の回数が増える場合や、標準的な診療では実施しない検査等を行う場合を含む。)。⑤医薬品Aの有効性又は安全性を明らかにすることを一つの研究目的として実施する。

 

(答)該当する(法の対象となる臨床研究に該当しない。)。

 なお、①の医薬品Aの承認の有無、③の事前の目標設定の有無又は④の診察、検査等の実施の有無にかかわらず、「観察研究」に該当する。⑤については、疾患登録システムを構築する場合など、診療情報を収集する時点では、必ずしもその研究目的が特定されていないことがあると考えられる。この場合、医薬品等の有効性又は安全性を明らかにすることが目的の一つに位置付けられた時点又は当該システムのデータを利用して医薬品等の有効性又は安全性を明らかにする研究を別途新たに開始する時点で、法の対象となる臨床研究への該当性について個別に判断することで差し支えない(問 52 参照)。

 また、法が制定された背景や、臨床研究の対象者をはじめとする国民の臨床研究に対する信頼の確保を図るという法の趣旨に鑑み、臨床研究に該当しない「観察研究」についても、結果公表時に、その利益相反の状況等について明確にすることが望ましい。

このように、有効性又は安全性を明らかにする研究であっても、特定臨床研究ではなく、観察研究に該当するという見解が示されているからです。

問51の方では、追加される検査は被験薬投与後の転帰や予後を確認するために行われるのに対して、問59の方は検査が追加される時期が明確ではないのが違うのかもしれません。

しかし、二つの場合の違いがあまりはっきりしないので、判断に困ります。

いろんな方からご意見を伺いながら、整理していかなくては、と思っています。

 

よりよい医療を届けるために、頑張ります。

2018年7月30日